『をんがへし』のキャラクターデザイン中、母親の霊のビジュアルで悩みました。特に足を描くべきか否かで。
一般的に「おばけは足が無い」と考えられています。すなわち、足の無い霊を描くと、どうしても「ベタなおばけ」感が出てしまいます。そう思われるのは屈辱です。
しかし『をんがへし』に登場する女霊は、通常時と怒り時とで大きく見た目を変えたかったのです。通常時は生身の人間と同じですが、怒り時は般若の形相になり、髪は逆立ち、手は強張って爪が伸びます。できれば足もわかりやすく変化させたい。でもベタにはしたくない…。
そこで、 「霊の形態進化」 という概念を考えました。
例えばトラックドライバーは、体の窓側だけが日光に長年さらされることで、全身が左右非対称に老化します。また、水泳選手は幼少期から「水かきで水をかくように」というイメージで練習を行った結果、指の間の皮膚が伸びて本当に水かきのような形状になるそうです(「単なる遺伝」とする説もあります)。
同様に、霊は息子を探して何十年も飛び回っているのだから、体の形状が変化してもいいはずです。空気抵抗が少ない形状に徐々に変化したと考えれば、足がジェラートのように尖るのも自然です。これでうまく説明がつきました。女霊の足が無いのは、ベタだからではなく、進化の結果なのです。
でも読者はこんな紆余曲折を知るはずもないので、結局「ベタなおばけだなあ」と思ってるんでしょうね。思ってるんでしょうね!